以前にも話題にしたかと思いますが、80年代のこの地方の各放送局は栄のテレビ塔にお天気カメラを設置しており、それらが現在のように名駅方面やオアシス21など様々な方向を向いていたり、そもそも左右に角度を振れる構造ではなかったりしたために、その全てが南を向いて久屋大通公園や矢場町方面を映しているというものでした。当時のニュース番組の構成はタイトルのあとに提供読みが入る流れがほぼ定番で、18時になって夕方のローカルニュースが始まると、各局がその提供読みのバックにテレビ塔のお天気カメラからのLIVE映像を映していたのです。つまり、この地方で18時過ぎにテレビを見ていると、ほんの数秒ですがどのチャンネルに変えても同じ景色が映っているという面白い現象が見られたというわけです。

ただ、90年代になると、お天気カメラも放送エリアの様々な場所に設置されるようになっていきます。CBCでは尾鷲の映像や高山の映像なども加わるようになったのですが、高山からの映像は『ホテルアソシア高山リゾート』さんに設置されたものでした。

1994(平成6)年に、高山のリゾート開発を目論み、JR東海とCBCが共同で『ホテルアソシア高山リゾート』とそれに併設された温浴施設『クア・アルプ』をオープンします。CM中では「森のリゾート・高山ランド」と表示されていますが、この名称を見聞きした覚えがないためにこれがこの共同事業の正式名称だったのか単なるキャッチコピーの類だったのかはわかりません。またCMの映像とナレーションがいまいちリンクされていなく、「クア・アルプ」に対してはなぜか説明がありません。またナレーションで言われている「アルプスイン」というのは一体何のことなのかわからないという、何とも妙なCMとなっています。急遽製作したとか、急遽状況が変わったとか、何かゴタゴタがあったことが推察できますね。

ともかく、CBCにとっては珍しい異業種参入ということもあって、この共同事業に力が入っていたのは当時よくわかりました。天気予報や各番組のCM前アイキャッチなどでよくこの高山の映像に切り替えられていました。ただ、1994年という時期を鑑みると、この事業自体がバブル期に話が持ち上がったもので、尚且つオープンにまで漕ぎ着けたもののその時機を逃してしまったものであることは明白で、2000年代に入って早々にCBCはこの事業から撤退することになります。その後、観光協会に運営が移行するものの、2009(平成21)年には廃業してしまいました。

『クア・アルプ』の失敗でCBCが経営的に打撃を受けていることが当時の週刊誌でも取り上げられました。堅実で尚且つ放送エリアの経済も好調なことから、キー局以外の放送局では社員の給与もトップクラスであったものが今後はその減額も止むを得ない、などとゴシップ的に書かれたりもしていましたが、事業を早々に手放したことですし、実際はどうだったのでしょうね。「石橋を叩いても渡らない」などと揶揄される愛知県に本拠地を置く企業の企業風土からしてみると、「そら見たことか」という反面教師になってしまうのでしょうが、ただ、もう少し時機を捉えて冒険してみたっていいんじゃないのかなとも思ったりもするのですが・・・。リニア開業の頃にはどうなっているのでしょう。