先週日曜日(8日)放送の『所さんお届けモノです!』(毎日放送)は、「東海道で100年以上続く老舗の新名物を探す」という企画で、お笑いコンビ「Wエンジン」のチャンカワイさんが愛知県内の藤川から二川までを巡っておられました。
その途中、豊橋市内までやってきたチャンさんが、街中で『ヤマサちくわ』さんの店舗を見つけて訪ねるのですが、この際チャンさんは「(山の形にカタカナの ”サ” を象った店のロゴを見て)よう見るヤツやん」「スゲー、本店ここ(豊橋)にあんねや」と随分驚いておられる。また、スタジオでVTRを見ていた陣内智則さんも「あ、“ヤマサ” やん」となにやらご存知の様子。
私はチャンさんが三重県出身の方であることは存じ上げていたので、心の中で、「確かに中京圏ではCMが超有名だし、知らない人はいないであろう有名企業だけれども、全国ネット番組でそれを言って果たして通用するのだろうか」と若干ハラハラしながら見ていました。スタジオでVTRを見ている所さんをはじめ、陣内さん以外の他の方々も頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいるのではないか、と。
こういう展開はよく関西出身のタレントさんにありがちな感じがします。近畿圏や関西地方という限定的な範囲で有名なものを、あたかも日本全国が知っていることのように発言してしまう。反面、東海三県ご出身の方がこういう発言をするのをあまり見かけません。でも、チャンさんは三重県出身・・・
・・・なんて思いながら、改めて確認を取ってみたところ、なんとチャンカワイさんは、三重は三重でも名張のご出身とのこと。
こうなると、もっと話はややこしくなってゆきます。なぜなら、名張は実際に中京圏ではあるものの、ほとんどのご家庭で、中京圏から発信されているテレビ電波ではなく、関西圏のテレビ電波を視聴している地域だからです。国も、名張の方々に名古屋の放送局の電波を視聴してもらうようテレビ草創期から整備を重ねてきたのにもかかわらず、住民の方々はそれに背を向け、あえて奈良県方面にアンテナを向け大阪の放送局の番組を視聴している、そんな地域です。つまり、チャンさんは三重県出身とは言えど、これまでの人生の中で名古屋の放送局の流す電波を視聴したことがなく、そもそも豊橋のあの『ヤマサちくわ』さんの存在自体をご存知でない可能性のほうが高いのです。
では、なぜ彼は「有名」であると反応したのか。そこに、スタジオの陣内さんも「あ、“ヤマサ” やん」と反応したことが、私の中で納得の答えを導きだすきっかけとなりました。
実は、関西にも “ヤマサ” を名乗る練り物のメーカーがあり、これまでも関西圏のみでCMを放送してきていてご当地では有名なのです。それが『ヤマサ蒲鉾』さんという企業で、こちらのロゴマークも『ヤマサちくわ』さんのものと全く同じ山の形にカタカナの ”サ” を象ったもの。チャンさんが反応したのも頷けます。また、本社を姫路に構えていますが、陣内さんは同じ兵庫県の加古川出身。陣内さんにとっては正真正銘の “地元企業” なのです。これはもう、おそらく100%に近い確率で、こちら姫路の “ヤマサ” さんと間違えられてしまっているのです。
同じような話を以前も取り上げたことがあります。『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)のとある放送回において、『イチビキ』さんの一ブランド「カネカ」のパックもやしを見たパティシエの林裕人さんが、食用油脂やパン酵母などを製造している大阪の『カネカ』さんと勘違いしてしまった一件です。この時も、関西絡みだったということになりますね。また、“カニ道楽” と名付けられた『ヤマサちくわ』さんの商品を巡って大阪の『かに道楽』さんと係争になった件でも、関西のマスコミの報道の文面から、『ヤマサちくわ』さんが関西では全く知られていない存在であることがわかると取り上げたこともあったり。
これに限らずこういう事象は他にも数多ありそうですね。ローカルなものがローカルを超えるときに何か不都合が起きる・・・。でもそんなハプニングが、ローカルな物事に拘って突き詰めていく際の面白みや機微になったりもするんですけど。