名古屋・東海ローカルCM 備忘録

名古屋を中心とした中京圏の70年代から90年代にかけて放送されていたCM動画を主に取り上げています。
動画サイトに数多アップされているCM動画を、自分が探しやすくするためのメモみたいなものです。
…のつもりで始めましたが、最近では単なる愚痴や共感を得られるあてもない儚い自己主張の場と化しています。

ヤマサちくわ

ヤマサ違い



先週日曜日(8日)放送の『所さんお届けモノです!』(毎日放送)は、「東海道で100年以上続く老舗の新名物を探す」という企画で、お笑いコンビ「Wエンジン」のチャンカワイさんが愛知県内の藤川から二川までを巡っておられました。

その途中、豊橋市内までやってきたチャンさんが、街中で『ヤマサちくわ』さんの店舗を見つけて訪ねるのですが、この際チャンさんは「(山の形にカタカナの ”サ” を象った店のロゴを見て)よう見るヤツやん」「スゲー、本店ここ(豊橋)にあんねや」と随分驚いておられる。また、スタジオでVTRを見ていた陣内智則さんも「あ、“ヤマサ” やん」となにやらご存知の様子。

私はチャンさんが三重県出身の方であることは存じ上げていたので、心の中で、「確かに中京圏ではCMが超有名だし、知らない人はいないであろう有名企業だけれども、全国ネット番組でそれを言って果たして通用するのだろうか」と若干ハラハラしながら見ていました。スタジオでVTRを見ている所さんをはじめ、陣内さん以外の他の方々も頭の中にクエスチョンマークが浮かんでいるのではないか、と。

こういう展開はよく関西出身のタレントさんにありがちな感じがします。近畿圏や関西地方という限定的な範囲で有名なものを、あたかも日本全国が知っていることのように発言してしまう。反面、東海三県ご出身の方がこういう発言をするのをあまり見かけません。でも、チャンさんは三重県出身・・・

・・・なんて思いながら、改めて確認を取ってみたところ、なんとチャンカワイさんは、三重は三重でも名張のご出身とのこと。

こうなると、もっと話はややこしくなってゆきます。なぜなら、名張は実際に中京圏ではあるものの、ほとんどのご家庭で、中京圏から発信されているテレビ電波ではなく、関西圏のテレビ電波を視聴している地域だからです。国も、名張の方々に名古屋の放送局の電波を視聴してもらうようテレビ草創期から整備を重ねてきたのにもかかわらず、住民の方々はそれに背を向け、あえて奈良県方面にアンテナを向け大阪の放送局の番組を視聴している、そんな地域です。つまり、チャンさんは三重県出身とは言えど、これまでの人生の中で名古屋の放送局の流す電波を視聴したことがなく、そもそも豊橋のあの『ヤマサちくわ』さんの存在自体をご存知でない可能性のほうが高いのです。

では、なぜ彼は「有名」であると反応したのか。そこに、スタジオの陣内さんも「あ、“ヤマサ” やん」と反応したことが、私の中で納得の答えを導きだすきっかけとなりました。

実は、関西にも “ヤマサ” を名乗る練り物のメーカーがあり、これまでも関西圏のみでCMを放送してきていてご当地では有名なのです。それが『ヤマサ蒲鉾』さんという企業で、こちらのロゴマークも『ヤマサちくわ』さんのものと全く同じ山の形にカタカナの ”サ” を象ったもの。チャンさんが反応したのも頷けます。また、本社を姫路に構えていますが、陣内さんは同じ兵庫県の加古川出身。陣内さんにとっては正真正銘の “地元企業” なのです。これはもう、おそらく100%に近い確率で、こちら姫路の “ヤマサ” さんと間違えられてしまっているのです。

同じような話を以前も取り上げたことがあります。『探偵!ナイトスクープ』(朝日放送)のとある放送回において、『イチビキ』さんの一ブランド「カネカ」のパックもやしを見たパティシエの林裕人さんが、食用油脂やパン酵母などを製造している大阪の『カネカ』さんと勘違いしてしまった一件です。この時も、関西絡みだったということになりますね。また、“カニ道楽” と名付けられた『ヤマサちくわ』さんの商品を巡って大阪の『かに道楽』さんと係争になった件でも、関西のマスコミの報道の文面から、『ヤマサちくわ』さんが関西では全く知られていない存在であることがわかると取り上げたこともあったり。

これに限らずこういう事象は他にも数多ありそうですね。ローカルなものがローカルを超えるときに何か不都合が起きる・・・。でもそんなハプニングが、ローカルな物事に拘って突き詰めていく際の面白みや機微になったりもするんですけど。

これっきりじゃなかった



以前、1996(平成8)年のCMを取り上げたときに、あまり印象がなくこの時だけだったのでは?、と申し上げた『サンロード地下街ヤマサ売店』CMの1990(平成2)年のものです。つまり、結構放送されていたということですね(ただしCBCに限ったのでしょうが)。

ただ、現在ではサンロード地下街にはヤマサさんの売店はなく、エスカのほうに移っているみたいです。

はじめての共同作業



これ、どちらのカテゴリに入れて良いのか迷いますが、あくまで『ヤマサちくわ』の「サンロード売店」のCMですので、『ヤマサちくわ』のカテゴリにしておきます。

先日も『洋菓子のボンボン』のCMを紹介しましたが、『ヤマサちくわ』と『サンロード』もこの地方を代表する静止画CM(ヤマサに関してはアニメーションのCMも定番でしたが)の送り手であり、これらが融合しているというのもまたなんとも言えない取り合わせで、思わずニヤリとしてしまいますね。

でも、あまり印象に残っていないということは、「はじめての共同作業」は「これっきり」だったということなのでしょう。

道頓堀(とんぼり)人情



「負けたらあかん」、のやそうです。

「かに道楽」 道頓堀vs愛知 商標権の法廷闘争、知名度がカギ(産経新聞)

商標の話となると、法律の話になってしまい、我々のようなシロウトがああ思うこう思うとか程度では到底太刀打ちできません。あくまで、床屋さんでの世間話程度の四方山話としてお聞き流しください。

法律云々の話は難しいのですが、企業の沿革とかであればちょっと調べれば出てきます。上記の記事中にもありますしね。

【かに道楽側の時系列】
昭和37年:「かに道楽」の第1号店オープン
昭和47年:「かに道楽」名称の商標登録を出願
昭和58年:登録

【ヤマサちくわ側の時系列】
昭和45年:「かに道楽」の販売開始

確かに、昭和37年に料理店の「かに道楽」がオープンしているのですから、昭和45年にかまぼこの「かに道楽」を販売していたのでは、ヤマサ側が後ということになり、ヤマサの主張はおかしいということになります。

ただ、ここが我々が一般に思う感覚と、商標を巡る判断が乖離しているというポイントなのです。

一般的に、商標が保護されるためには、その商標を使用する商品や役務を指定して登録を申請し、登録されなければなりません。例えば東海地方での例を挙げると、「ひつまぶし」というひらがな五文字の名称は「あつた蓬莱軒」が商標登録を有していますが、当然これには「あつた蓬莱軒」側が登録されている旨を主張できる商品や役務が細かく指定されていて、逆を言えばこの指定に当てはまらない商品や役務には「ひつまぶし」という名称が使用できることとなります。また、これとは別に「あつた蓬莱軒」は、第43類「飲食物の提供」を指定役務とした「ひつまぶし」の商標登録を申請し、他の料理店が「ひつまぶし」という名のメニューをお店で提供できないようにしようと目論みましたが、これは却下されています。なぜなら、お店で提供される「ひつまぶし」というメニューは既に一般的に定着している(これを普通名称といいます)ためです。我々一般人からしてみると、「商標登録」がされていれば、全ての物事においてその名称を他者が使うことは出来なくなりそうな気がしてしまいますが、実はこのように、他者の権利も認めるために、申請者側の権利に明確な線引きがされているというわけなのです。

上記と今回の問題を照らし合わせてみると、料理店名の「かに道楽」が別にもう一社登場した、とかですと確実に商標権の侵害に当たりますが、この場合指定役務が異なっているので、その点では侵害に当たらない可能性もあります。ただ、おそらく料理店の「かに道楽」側は、指定商品や役務を細かく指定し登録を果たしているはずです。

ここで、ヤマサ側の主張である、「商標登録前の販売開始」という事実が活きてくるのです。つまり店名は既にあったかもしれないが、料理店側から指定商品や役務の指定がされる前に、全く別の商品・役務として「かに道楽」という名称の商品を発売をしていた、という商標権が何とはなしに保護している“他者の権利”を主張しているのでしょう。

ところで…。
記事中一貫して、料理店側を「かに道楽」と表記しているのに対して、ヤマサ側を「練り物会社」と表記しています。通常、ヤマサ側を「練り物会社側」と表記するのであれば、かに道楽側は「料理店側」と表記しなければおかしいです。産経の偏ったスタンスが垣間見られます。やはり、いくら全国紙を標榜していても、中身が大阪という一地方のローカル新聞を脱していないあらわれですね。意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、“全国紙”とされる産経新聞の全体の発行部数は、“地方紙”とされる中日新聞の中京圏分だけの発行部数にすらはるかに及んでいないのです。

また、記事中の大学教授のコメントにもいささか疑問が。料理店の商標申請の段階で、ヤマサのかまぼこが有名でなければ先使用権は認定されない、とありますが、逆を言えば、その時の料理店側の名称の周知性もどのくらいだったのかという点が抜けています。かまぼこが「1つの県内だけでなく、隣接するいくつかの県にまたがって『大体知られている』ぐらいじゃないといけない」のだとしたら、料理店側も「1つの県内だけでなく、隣接するいくつかの県にまたがって『大体知られている』ぐらいじゃないといけない」でないと不公平です。あくまでスタートラインは料理店側もヤマサ側も昭和47年の段階なのであって、料理店側だけその後の周知性で判断してもらおうというのでは虫が良すぎます。


ともかく、天童よしみさんはなにわの心を歌います。この度はさしずめ

「♪負けたらあかんで豊橋に」 

というところでしょうか。

東三河つながり



東三河つながり、というわけでもないのですが、『ヤマサちくわ』のCMを。

東三河地方は、愛知県にありながら実は「名古屋都市圏」に含まれません。これは中心都市である名古屋市への指向性が薄いからだそうで、三重県にありながら四日市が都市圏に含まれているのと対照的です。ただ、「名古屋都市圏」に含まれる各都市も、首都圏や近畿圏における、周辺都市から中心都市への指向性の高さに比べると、名古屋市への指向性は低くなっているそうです。これは各地域に満遍なく大規模な雇用が点在しており、わざわざ中心都市(=名古屋)まで通勤で出かけることなく生活できるというこの地域のライフスタイルが数値となって現れているのでしょう。

東三河地方だって、名古屋まではJRと名鉄が高頻度で結び、テレビなどのマスコミも一緒ですから、数値で線引きをせず正常な感覚を持ってすれば充分に「名古屋都市圏」の一部に他なりません。

だってこのCM、名古屋の人も四日市の人も懐かしいと思うでしょう?。これは全く違う圏域の人とは共感し合えない感覚ですから、東三河も同じ圏域ってことなんです。ネットでチラホラ見かける、東三河はどちらかというと浜松寄りなどというトンデモ説を信じちゃいけませんよ。浜松では「放課」といっても意味が通じませんからね(笑)。
著者近影(ウソ)

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